「洗濯機の水抜きをしなくても、普段通り脱水ボタンを押して終わらせれば問題ないのでは」と軽く考える利用者は少なくありません。しかし、現場の引越し作業員や家電修理エンジニアの証言によると、水抜きをしなかったことが原因で起きる損害トラブルは毎年後を絶ちません。
最大の被害例は、運搬時の浸水事故です。洗濯機の内部には、排水弁の手前や糸くずフィルターの内部、ドラム式のバランサー構造周辺に想像以上の水が溜まっています。水抜きを怠ったまま洗濯機を傾けて部屋から搬出すると、階段や廊下、さらには引越しトラックの荷台内に汚れた残水が一気に漏れ出します。自室の床材を腐食させるだけでなく、トラック内で他の高級家具や精密機器、段ボールを水浸しにしてしまい、数十万円規模の損害賠償問題に発展する事例も報告されています。
さらに深刻なのが、洗濯機自体の内部故障です。本体内に溜まった水が輸送中の強い揺れによって電子制御基板に付着すると、新居で電源を入れた瞬間にショートし、一発で修復不可能な故障に至ります。また冬場においては、気温が氷点下になる地域で「洗濯機の凍結防止」を怠った結果、給水弁や内部ホース内の水が凍って体積が膨張し、樹脂パーツやホース接続部が破裂する事故が多発します。メーカーの無償保証期間内であっても、凍結や輸送時の浸水による故障は「ユーザーの取扱不備」と判定され、全額自己負担(相場:2万5000円〜6万円)の有償修理になるケースがほとんどです。