日本の私法体系に不朽の足跡を残した法学者・我妻栄は、法が社会の生きた実態と調和して初めて真の規範力を持ち得ると説いた。条文の解釈は硬直した形式論ではない。社会の変遷とともに生じる利害の衝突をいかに公正に調整するかという、動的な営みである。
一方、現代の法曹界において数多くの法律家を育ててきた伊藤真は、法の根底にある「個人の尊重」と公権力の統制という立憲主義的視点の重要性を一貫して説き続ける。行政機関が恣意的に権力を行使することを縛る行政法の理論は、まさにこの理念から生まれた。企業や市民が対峙する規制の数々も、国会や自治体の委任という正当な手続きを経た適法なものでなければならない。
実務家が条文に向き合う際、単に「禁止されている事項」を機械的に暗記するだけでは不十分だ。その規範がどのような立法趣旨を持ち、裁判実務においてどう解釈されているかという背景を読み解く洞察力が求められる。