幕内最高優勝45回。通算1187勝。数字だけを見れば、白鵬翔という力士は文字通り神話の領域に達した存在だ。立ち合いの鋭さ、変幻自在の取り口、勝負どころで見せる冷徹なまでの勝負勘。だが、その絶対的な強さゆえに、土俵の美学や伝統的様式美を重んじる保守層との摩擦は絶えなかった。
日本相撲協会の内部において、彼の存在感はあまりに巨大すぎた。土俵上で見せたガッツポーズや立ち合いの変化は度々議論の的となり、引退後もその一挙手一投足に特別な警戒の目が向けられてきた歴史がある。圧倒的な実績がもたらすカリスマ性と、組織の規律。この相容れない二つの要素が激突した結果が、近年の角界における一連の軋轢の根底に横たわっている。