Saucy Dogの楽曲群において、「コンタクトケース」が放つリアリティは群を抜いています。歌詞の核となるのは、恋人が去ったあとの部屋、とりわけ洗面所にぽつんと残されたコンタクトレンズの保存ケースです。
劇的なセリフや派手な喧嘩の描写ではなく、歯ブラシや化粧水と並んで置かれていたはずのプラスチックケース。コンタクトレンズを使用する人にとって、それは毎朝装着し、毎晩外して洗浄液に浸す「生活そのもの」を意味します。つまり、コンタクトケースがそこにあるということは、相手がこの部屋で夜を明かし、朝を迎えていたという確固たる同棲生活の証拠に他なりません。
別れを告げられ、部屋の荷物はあらかた持ち出されたにもかかわらず、なぜか洗面所の隅に忘れ去られた小さなケース。主人公はそれをゴミ箱に投げ捨てることができず、見るたびに相手の指先の感触や、鏡の前でコンタクトを外していた横顔を思い出してしまいます。「捨ててしまえば完全に終わってしまう」という恐怖と、「忘れていかれた=自分はその程度の存在だったのか」というやるせなさが、わずか数センチのケースに凝縮されているのです。