慢性肺性心を引き起こす最大の主犯格として知られるのが、肺性心COPD合併症です。長期間の喫煙習慣などが原因で気管支や肺胞が破壊される慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、肺のガス交換機能が低下し、慢性的な低酸素血症に陥ります。ヒトの肺血管には、酸素濃度の低い部分の血管を反射的に狭めて血液を効率の良い場所へ振り分ける生理機能(低酸素性肺血管攣縮)が備わっていますが、肺全体が酸素不足になると肺動脈全体が一斉に収縮してしまい、逃げ場のない血圧上昇を招くのです。
呼吸器専門医の臨床統計によると、中等度から重度のCOPD患者の約30〜50%に潜在的な肺高血圧が確認され、その一部が明白な肺性心へと移行していると報告されています。しかし、原因はタバコ関連疾患にとどまりません。多角的な視点から肺性心の原因を整理すると、以下のような幅広い呼吸器・胸郭疾患が関与しています。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支拡張症:気道の閉塞と肺胞破壊による毛細血管の減少。
- 間質性肺炎・肺線維症:肺の組織が線維化して硬くなり、血管床が物理的に圧迫・減少。
- 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH):器質化した血栓が肺動脈を恒久的に狭窄させる難病。
- 重度の睡眠時無呼吸症候群(SAS):夜間の反復する重篤な低酸素血症による肺血管攣縮。
- 胸郭形成不全・結核後遺症:胸郭の著しい変形によって呼吸運動と肺循環が長年障害されるケース。