1969年の第1部スタートから約30年にわたり風車の弥七を演じ続けた中谷一郎さん。東野英治郎さん、西村晃さん、佐野浅夫さんと歴代の黄門様が交代していく中でも、中谷さんは常に変わらぬ鋭い眼光と身のこなしで番組の屋台骨を支えていました。
しかし、1990年代後半に入ると異変が生じます。持病であった糖尿病の悪化に加え、深刻な咽頭がんを患い、声帯への影響から劇中で以前のような滑らかな発声が困難になっていきました。制作陣は中谷さんの体調を最優先に考慮し、出演シーンを絞るなどの配慮を行いましたが、病状は好転せず、1999年放送の第27部をもって事実上の降板となりました。
劇中では明確な「死」や「別れ」を描くことなく、あくまで旅の裏で任務に奔走しているという設定が維持されたのは、制作陣とファン双方の中谷さんに対する絶大な敬意の表れでした。闘病を続けた中谷さんでしたが、2004年4月1日、咽頭がんのため73歳でこの世を去りました。名優の訃報は、昭和から平成の時代劇ファンに深い喪失感を与えました。