ナシ婚急増の背景と真相を探る上で、避けて通れないのが「金銭的リアリズム」と「人間関係の再編」です。各種アンケート調査における結婚式を挙げない理由の上位を分析すると、単なる節約志向にとどまらない、現代社会特有のインサイトが浮かび上がってきます。
第一の壁は、言うまでもなく結婚式費用平均相場の高騰です。物価上昇や人件費の高騰を受け、60名規模の披露宴を行う場合の総額は320万円から350万円前後に達します。ご祝儀による回収を見込むとしても、新郎新婦の自己負担額は100万〜150万円程度にのぼるのが通例です。「これから始まる新生活、住宅ローンの頭金、教育資金、あるいは新婚旅行や資産形成に回したい」と考える堅実派にとって、わずか数時間のイベントに数百万円を投じる行為は、リスクの高い投資と映るのも無理はありません。
第二の決定打は、昭和・平成期に色濃かった「儀礼的世間体」からの解放です。かつての結婚式は、親の威信や会社の上下関係を誇示する場としての側面を強く帯びていました。しかし、終身雇用が崩壊しリモートワークが普及した今、職場の同僚や上司に過度なおもてなしをし、主賓挨拶を依頼すること自体に強い心理的疲弊を覚える若年層が急増しています。
人間関係の「心理的バウンダリー(境界線)」を厳格に保ち、本当に親しい人との時間だけを大切にしたいというタイパ(時間対効果)意識の定着が、大掛かりな披露宴を敬遠させる決定的な原動力となっているのです。