ハンセン病をめぐっては、今なおインターネット上や世間一般で誤った認識が散見されます。資料館の展示と公的記録に照らし合わせ、代表的な3つの誤解を正します。
【誤解1】「非常に感染力が強く、隔離しなければ社会が崩壊する病気だった」
真相:ハンセン病の原因菌である「らい菌」の感染力は極めて弱く、成人が発症することは極めて稀です。1940年代にはプロミンという特効薬が開発され、完全に治癒する病気となっていました。それにもかかわらず、日本政府は1996年まで強制隔離を続けました。医学的根拠のない隔離は、感染防止のためではなく、国の偏見と政策の硬直化による人為的な過誤でした。
【誤解2】「1996年のらい予防法廃止で問題はすべて解決した」
真相:法律が廃止されても、数十年にわたって刷り込まれた社会的差別は消えませんでした。故郷に帰ることができず療養所で一生を終える回復者が大半であり、2019年には回復者の家族に対する国の賠償責任を認める司法判断(ハンセン病家族訴訟判決)が下されました。家族の就職や結婚における差別、戸籍の分断など、被害の余波は令和の現代にまで続いています。
【誤解3】「自分たちには関係のない、遠い昔の特殊な出来事である」
真相:未知の感染症に対する過剰な恐怖から感染者を魔女狩りのように排除する心理構造は、近年のコロナ禍における自粛警察や誹謗中傷と全く同じ構図です。ハンセン病問題は「過去の悲哀」ではなく、社会が恐怖に駆られたときに誰もが加害者・被害者になり得るという「集団心理の教訓」です。