瘤が手術基準に達した場合、選択肢は大きく分けて2つ存在します。伝統的な「開腹による人工血管置換術」と、カテーテル技術を用いた低侵襲な「ステントグラフト内挿術(EVAR)」です。それぞれの治療成績と術後生存率は、患者の身体状態によって選ぶべき方向性を大きく左右します。
人工血管置換術(開腹手術)は、お腹を正中切開して直接大動脈を露出し、瘤の部分をポリエステル製などの強固な人工血管に縫い替える手法です。開腹による身体的負担は大きく、術後回復に一定の時間を要するものの、一度吻合を完了してしまえば数十年単位で破裂の心配がほぼ消失します。予定手術(破裂前)における手術死亡率は1〜2%未満と極めて安定しており、長期的な遠隔成績・生存率の信頼性は盤石です。
ステントグラフト内挿術(EVAR)は、両足の付け根(大腿動脈)からカテーテルを挿入し、金属の骨組み(ステント)が付いた人工血管を瘤の内側に留置して血流を遮断する治療です。開腹を行わないため出血量が極めて少なく、手術翌日から歩行可能なケースも珍しくありません。術後早期の死亡率は1%未満にとどまり、体力に不安を抱える高齢者にとって福音となっています。
ただし、EVARには注意すべき合併症が存在します。留置したグラフトの隙間から瘤内へ血液が漏れ込む「エンドリーク(内漏れ)」です。エンドリークが生じると、術後数年を経て瘤が再拡大し、破裂に至るリスクが生じます。そのため、EVARを選択した場合は年1〜2回の定期的な造影CTやエコーによる厳格な画像フォローアップが生涯にわたって義務付けられます。「低侵襲だが定期通院が欠かせないEVAR」か、「初期侵襲は大きいが根本治療となる開腹」か、患者の余命予測と全身状態を照らし合わせた見極めが求められます。