富山常備薬の急成長を語る上で欠かせないキーマンが、同社の創業者であり長年代表取締役を務めた松村謙一(まつむら けんいち)氏です。伝統的な製薬会社といえば代々続く薬種商や薬学部出身の経営者が多い中、松村氏の経歴は業界内でも際立って異色なものでした。
松村氏は富山県内の高校を卒業後、ビジネスの現場へと飛び込み、広告宣伝や通販・セールスプロモーションの実務で叩き上げのキャリアを形成しました。大学で薬学を専門に学んだ研究職出身ではなく、「消費者が何を求めているのか」「いかにして心に届く言葉を紡ぐか」というマーケティングの最前線で培った嗅覚こそが、後のビジネスモデルの根幹となっています。
2000年代初頭、インターネット通販が普及し始める過渡期において、松村氏はあえて新聞折込チラシや地上波テレビのインフォマーシャルに着目しました。富山県に古くから根付く「先用後利(用いるを先にし、利を後にす)」の配置薬精神を受け継ぎながら、電話一本で全国に医薬品を届ける通信販売事業会社として株式会社富山常備薬グループを設立。この卓越したビジネスモデルにより、地方発のベンチャー企業から年商数百億円規模のメガ通販企業へと一気に駆け上がりました。