「富士山は我が県のもの」という誇りを巡る議論は、静岡県側が主張する「表富士」と、山梨県側が誇る「裏富士」という呼び名にも色濃く表れている。
静岡県側から望む富士山は、側火山である宝永山を抱き、駿河湾や茶畑越しに雄大に広がる裾野の力強さが特徴だ。古くから東海道を行き交う旅人たちに親しまれ、「表富士」として親しまれてきた。
一方、山梨県側(甲府盆地や富士五湖周辺)から見る富士山は、左右対称に美しく整った端正な円錐形が際立つ。千円札の裏面に描かれている本栖湖畔からの「逆さ富士」に代表されるように、絵画的な完璧さを持つ景観が全国的な人気を誇る。
かつては観光客の誘致や名産品のPRで火花を散らした両県だが、現在ではそのライバル関係も成熟した。2月23日を「富士山の日」として両県が合同で条例制定するなど、対立から「日本の宝を共に守り育てるパートナー」へと関係性は完全にシフトしている。