この地にレンズを向ける際、避けて通れない歴史的な視点がある。生涯を通じて富士山を撮り続け、旧千円札や五千円札の図案の原画となった名作『湖畔の春』を生み出した写真家、岡田紅陽の足跡だ。
紅陽は光の角度、雲の沸き立ち、風による湖面の揺らぎを計算し尽くしてシャッターを切った。現代のネイチャーフォトグラフィにおいても、その精神は脈々と受け継がれている。単に花を写すのではない。花の上に落ちる光の粒や、大気中の湿度が生み出す空気遠近感を捉えるのだ。
デジタル一眼レフやミラーレスカメラを手にするフォトグラファーだけでなく、最新のスマートフォンを手にした旅行者にとっても、紅陽が愛した山中湖の光を探求する行為そのものが、贅沢な表現体験となる。