日本のインターネット上では、藤浪の制球難について長年「重度のイップスではないか」「精神的な崩壊ではないか」という憶測が根強く囁かれてきました。5ちゃんねるやSNSでは、右打者の頭部付近へ抜けるすっぽ抜けの球を見るたびに、感情的な批判や心無い書き込みが溢れた過去があります。
しかし、日米のピッチングアナリストやバイオメカニクスの専門家が導き出した結論は、ネット上の俗説とは大きく異なります。藤浪の制球難の本質は、精神論としてのイップスではなく、197cmという長大な手足を制御するための運動連鎖(キネティック・チェーン)のズレにあります。
MLBの投球データ解析システム(Statcast)の数値を検証すると、藤浪の投球フォームはリリースの瞬間における指先のミリ単位のズレが、ボールの軌道に極端な変化をもたらす構造になっています。長身投手特有の角度と球威を生み出す反面、ほんのわずかな疲労やステップ幅の狂いが、極端な制球の乱れに直結していたのです。
メジャー球団のアナリストはこう分析しています。
「米国の首脳陣は誰も彼を『イップス』とは見なしていない。純粋にボールを放すポイントの再現性の問題であり、リリーフとして1イニングを全力で投げるシチュエーションであれば、ストライクゾーン周辺にボールを集めるだけで打者は手が出ない。奪三振率の高さがそれを証明している」
実際、オリオールズ時代にはセットアッパーとして重要な局面を任され、三振の山を築いてファンを沸かせました。日本時代のように「先発完投で100球以上をコントロールする」という過度な要求から解放され、持ち前の圧倒的な球威を短イニングで出力するスタイルを確立したことで、藤浪の評価は米国内で再定義されています。