メークインが「煮込み料理の絶対的エース」と呼ばれる最大の根拠は、加熱しても角が取れず煮崩れしない点にあります。この現象は調理科学の視点から細胞レベルで完全に説明がつきます。
じゃがいもが煮崩れる主因は、細胞内部に含まれるデンプン粒の膨潤と、細胞壁同士を接着しているペクチンの力学関係にあります。加熱によって約60〜70℃に達するとデンプンは糊化(α化)し、周囲の水分を吸って猛烈に膨らみます。デンプン含有量が多い品種ほど細胞内部の膨圧が高まり、細胞壁を押し広げて接着面を引き剥がしてしまいます。これが男爵芋に見られる「粉ふき」や「煮崩れ」の正体です。
メークインの場合、デンプン価は約13〜15%程度と男爵芋(約15〜18%)に比べて明確に低く、逆に水分量は高めに保たれています。さらに、細胞同士を結びつけるペクチン質の網目構造が強固であるため、加熱によってデンプンが膨らんでも細胞組織が壊れず、強固な結合を維持し続けます。
プロの厨房で長時間コトコトと煮込んでも煮汁が濁らず、具材の輪郭が美しく残るのは、この低デンプン・強固ペクチンという生化学的バランスが保たれているからにほかなりません。