ネット上のQ&AサイトやSNSで最も蔓延している危険な誤解が、「年金受取の利益が年間20万円以下なら申告しなくていい」という言説だ。税務署関係者やファイナンシャルプランナーが口を揃えて警鐘を鳴らす通り、個人年金保険で20万円以下なら確定申告不要という情報の真相には、重大な法制上の欠落がある。
所得税法第121条が規定する「給与所得者で給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告を要しない」というルールは、あくまで「国の所得税」に限った救済措置に過ぎない。地方税法にはそのような免除規定は存在せず、個人年金保険の住民税への影響と手続きにおいては、雑所得が1円でも発生していれば市区町村への住民税申告を行う法的義務がある。
「税務署に行かなくていいから何もしなかった」と放置していると、後日自治体から課税調査が入り、無申告加算金や延滞金を上乗せされた住民税の納付書が届くことになる。さらに深刻なのは、申告漏れによって前年の総所得金額が後から修正され、国民健康保険料や介護保険料の算定基準額が引き上げられる二次被害だ。70歳以上の高齢者の場合、医療機関窓口での自己負担割合が1割から2割、あるいは3割へと引き上げられる引き金にもなりかねない。これこそが、制度の建前と現場の実態を知るプロが「住民税の単独申告を絶対に怠るな」と強く警告する理由だ。
さらに、年金受取額から必要経費を差し引いた差益が年間25万円以上になる場合、保険会社側で10.21%(復興特別所得税含む)が源泉徴収されて支払われる。この源泉徴収が行われている場合、確定申告を行うことで払い過ぎた税金が還付されるケースもある。申告不要と思い込んで放置することが、二重の意味で損失を招く構造になっているのだ。