中村七之助が舞台上で放つ孤高の気品は、いかにして形成されたのか。その原点には、父である十八代目中村勘三郎の厳しい教えと深い愛情が存在する。「型があるから型破り、型がなければそれは形無し」。父が残したこの名言は、現在の彼の血肉となって息づいている。
歌舞伎における女形は、単に女性を模倣する職能ではない。男である役者が虚構の中に真の女性美を立ち上がらせるという、きわめて高度な抽象表現だ。兄の中村勘九郎がダイナミックで力強い立役として舞台を力強く牽引する一方で、七之助はその傍らで静謐かつ鮮烈な情念を立ち上がらせる。兄弟ならではの呼吸の息合いは、中村屋の舞台に独特の緊迫感と華やかさをもたらしている。