定期テストや模試において、『更級日記』の「物語」から出題される文法問題のパターンは極めて限定的です。確実に点数を奪取するための識別メソッドを整理します。
1. 「かは〜けむ」「か〜む」「ぞ〜いみじき」の係り結びと構文機能
本章段には、入試古典の王道ともいえる係り結びが密集しています。
- 「いかばかりかはあやしかりけむ」:係助詞「か+は」が重なることで、反語の意味が強まります。「どれほど見苦しかっただろうか(いや、本当にひどい田舎者であった)」という自己卑下のニュアンスを過去推量の「けむ」が受けて連体形結びとなっています。
- 「そらにいかでか覚へ語らむ」:疑問副詞「いかで」+係助詞「か」+推量助動詞「む」のコンビネーションです。「どうして暗記して語ってくれようか(いや、語ってはくれない)」という明確な反語構文です。「む」の文法的意味は「推量」ですが、文脈全体で反語を形成している点を問う記述問題が目立ちます。
- 「うれしさぞ、いみじきや」:強調の係助詞「ぞ」を受けて形容詞「いみじ」が連体形「いみじき」に結び、さらに詠嘆の終助詞「や」が接続する構文です。感情の昂ぶりが最高潮に達した状態を表現しています。
2. 助動詞「なり」の識別(断定・伝聞推定)
文中に2回登場する「なる / なりに」の識別は定番の設問です。
- 「いかに思ひはじめけることに(断定)か」:体言「こと」に接続しているため、断定の助動詞「なり」の連用形です。直後に係助詞「か」があり、文末の「あらむ」が省略されています。
- 「物語の多く候ふなる(伝聞推定)」:終止形接続(ラ変型には連体形接続)である丁寧補助動詞「候ふ」の終止形に接続しているため、伝聞の助動詞「なり」の連体形です。「都には物語がたくさんあるという(噂で聞く)」という意味になります。
3. 敬語の識別と「二方面への敬語」
少女が薬師仏に祈るセリフ内の敬語構造は、敬意の方向(誰から誰への敬意か)を問う問題の宝庫です。
- 「京にとく上げたまひて」:尊敬の補助動詞「たまふ」(連用形)。祈り手である「孝標女」から、祈願の対象である「薬師仏」への敬意。
- 「物語の多く候ふなる」:丁寧の補助動詞「候ふ」(終止形)。話者である「孝標女」から、聞き手(この場合は仏に対する敬虔な語り口、または日記の読者)への丁重な表現。
- 「ある限り見せたまへ」:尊敬の補助動詞「たまふ」(命令形)。「孝標女」から「薬師仏」への敬意。