そもそも、なぜ事実の裏付けが一切存在しない「根も葉もない話の真相」が、まるで真実であるかのようにコミュニティ内を駆け巡るのでしょうか。この現象は個人のモラルの問題にとどまらず、人間心理と社会構造のメカニズムに起因しています。
社会心理学者ゴードン・オールポートとレオ・ポストマンが提唱した「噂の公式(Rumor Formula)」によると、「噂の強さ(拡散力)= 話の重要度(Importance)× 事実の曖昧さ(Ambiguity)」という関係式が成り立ちます。対象となるテーマが人々にとって関心が高く(例:リストラ、人事異動、有名人の不祥事、経済危機)、かつ公式な情報が不透明で曖昧であるほど、噂の拡散力は爆発的に増大します。
さらに、心理学でいう「確証バイアス」と「認知的不協和の解消」が油断ならない拍車をかけます。「あの人は普段から調子に乗っているから失敗してほしい」「この組織には何か隠された不正があるはずだ」という潜在的な願望や不満を抱えている人は、その感情を正当化してくれる情報であれば、たとえ根拠が皆無であっても無批判に信じ込み、他者へ共有(拡散)することで自らの認知のバランスを保とうとするのです。