東京都江戸川区出身で、東京都立国際高校を経て筑波大学に進学した黒崎愛海さんは、高い語学力と旺盛な知的好奇心を備え、2016年8月26日にフランス・フランシュ=コンテ大学の付属語学センターへ留学しました。家族や友人に囲まれ、自立した未来を歩み始めた矢先の同年12月4日夜、彼女の人生は突如として断ち切られることになります。
事件当夜、黒崎さんはブザンソン郊外のレストランで元交際相手のニコラス・セペダと食事を共にした後、学生寮「ルソー」の自室に戻りました。日付が変わった12月5日未明、寮の住人たちが耳にしたのは、静寂を切り裂くような「骨を凍らせる女性の絶叫」と、何かが激しく打ちつけられる鈍い物音でした。恐怖を感じた複数の留学生が部屋の外を確認したものの、その直後に物音は止み、警察への通報はなされませんでした。
セペダは黒崎さんの命を奪った後、彼女のスマートフォンを用いて家族や知人に「パスポートのトラブルがあり領事館へ行く」「一人になりたい」といった虚偽のメッセージを送信。周到な偽装工作によって捜索の初動を遅らせ、その間にレンタカーでフランスを脱出、チリへと逃亡しました。失踪届が出されたのは、事件から数日を経て大学の講義を無断欠席し続けたことを不審に思った教員らの連絡がきっかけでした。