ネットカルチャーの歴史を振り返る上で、「ゴルァ」というスラングの起源を避けて通ることはできません。この言葉は、恫喝や注意喚起の際に発せられる日本語の「コラァ!」が、タイピングの勢いや巻き舌のニュアンスを伴ってネットスラング化したものです。音声としての暴力性をテキスト上でデフォルメし、一種の戯画化された怒りとして定着していきました。
このスラングが爆発的な認知を得た震源地は、1999年に開設された巨大掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」です。2000年前後のテキストサイト全盛期からFlash動画黄金期にかけて、利用者の間で急激に普及しました。掲示板内の煽り合いや荒らし行為に対するリアクション、あるいは理不尽な事象に対する突っ込みとして、テキストの末尾に「ゴルァ」を付け加える書き込みが定着したのです。
その象徴として誕生したのが、半角カナの「゚(半濁点)」とロシア文字の「Д(デー)」を巧みに組み合わせた「(゚Д゚)ゴルァ」という造形でした。カッと見開かれた丸い目と、怒りで引き結ばれた、あるいは大声で叫ぶ四角い口。極限までミニマルな記号構成でありながら、人間の激高した表情を生々しくトレースしたこの造形は、瞬く間に名作アスキーアート(AA)としての地位を築き上げました。
当時のネット論客の手記やログを紐解くと、この顔文字は「八頭身モナー」や「ギコ猫」といった代表的キャラクターと融合し、数々のアニメーションFlashや長編AA劇へと発展していった足跡が確認できます。単なる文字の装飾を超え、ネット黎明期の混沌とした熱量を背負ったアイコニックなキャラクターとして愛されてきた歴史があります。