谷口浩美が遺した言葉は、日本のスポーツジャーナリズムのあり方にも一石を投じた。それまでのスポーツ報道では、敗戦やトラブルに見舞われた選手には「悲劇の主人公」というフレームワークが当てはめられることが多かった。悔し涙や無念さを前面に押し出す報道が主流だった時代である。
しかし、彼の放った「こけちゃいました」は、過度な悲壮感を爽やかに吹き飛ばした。この出来事は、報道陣に対してアスリートの人間性や多様な感情の表現を受け入れる寛容さをもたらした。失敗や不幸な出来事をどう乗り越え、どう言葉にするかという問いに対し、スポーツ報道における新たな価値観を提示した名場面として、メディア史に深く刻まれている。