共通テストや二次私大の入試問題で出題される古期造山帯は、事実上指で数えられるほどに限られています。しかし、それぞれの地理的背景と歴史的役割には際立った個性があります。
北米大陸東部を貫くアパラチア山脈は、アメリカ産業革命の心臓部となった山脈です。背後に広がるピッツバーグの鉄鋼業は、アパラチアの豊富な原料炭と五大湖周辺メサビ鉄山(安定陸塊)の鉄鉱石が水運で結びついたことで成立しました。最高峰のミッチェル山でも標高2,037mにとどまり、全体が美しい森林に覆われたなだらかな丘陵地が連なります。
ロシアのヨーロッパ部とシベリア部を南北に隔てるウラル山脈は、伝統的なユーラシア大陸の内陸境界線として機能してきました。標高は1,000〜1,800m程度と控えめですが、石炭だけでなくプラチナや金、鉄鉱石など極めて多彩な地下資源が濃集しており、第二次世界大戦時のソ連を支えた一大工業地帯の母体となっています。
オーストラリア東海岸沿いを弧状に走るグレートディバイディング山脈(大分水嶺山脈)は、日本のエネルギー安全保障に直結する山地です。広大な露天掘り炭田が点在し、日本が輸入する一般炭・原料炭の筆頭供給源であり続けています。標高2,000m前後の頂稜部は高原状を呈し、東側斜面に雨をもたらす一方で内陸側に乾燥気候を作り出す気候境界の役割も果たしています。
スカンディナヴィア半島を走るスカンディナヴィア山脈は、古生代カレドニア造山運動によって誕生しました。古期造山帯でありながら、氷期に厚い大陸氷河に覆われたため、鋭利なU字谷や複雑に入り組んだフィヨルドが発達している点が特異です。侵食の主因が風雨だけでなく「氷河」であったことが景観を決定づけています。