脚本を手掛けた三谷幸喜氏は、アメリカの名作ドラマ『刑事コロンボ』の大ファンであることを公言しています。コロンボが「うちのカミさんがね」「あともう一つだけ」と相手を油断させながら包囲網を狭めていく手法を、三谷氏は日本特有の「礼節と慇懃無礼」へと見事にローカライズしました。
日本社会において「お察しします」という言葉は、相手の心情や苦境を思いやる最上級の配慮表現です。しかし、古畑任三郎が放つそれは、「あなたの苦しみは痛いほど理解できます。だからこそ、あなたが犯人ですね」という冷徹なロジックを秘めています。この共感と告発のアンビバレンス(二面性)が、視聴者に強いカタルシスを与えました。
さらに、このセリフが国民的なミームとなった背景には、1990年代後半から2000年代にかけて隆盛を極めたモノマネ番組の影響があります。コージー冨田さんやミラクルひかるさん、くりぃむしちゅーの有田哲平さんらが田村正和さんのモノマネを演じる際、「え〜〜、古畑任三郎です」「お察しします」というフレーズを誇張して多用したことで、劇中の頻度以上に世間へ刷り込まれていったという側面は見逃せません。