物語は、主人公の少年がしばらくの間、田舎のおばあさんの古い家に預けられる場面から幕を開けます。その家は現代の住宅とは異なり、天井が非常に高く、太い梁(はり)が張り巡らされた薄暗い空間が頭上に広がっていました。
少年は、その天井の暗がりに「誰かがいる」ような気配を感じて怯えます。怖がる少年に向けて、おばあさんは平然とした顔で次のような言葉を投げかけます。
「上を見なければいいのさ。見なければ、怖くないよ。見なければ、いないのと同じだからね」
この言葉を聞いた少年は、極力上を見ないように努め、昼間は平穏に過ごせるようになります。しかし、安心したのも束の間、夜になり、ふとした瞬間に少年は無意識に視線を上へと向けてしまいます。
そこで待っていたのが、この絵本の最大の見せ場であるラストの結末です。見上げてしまった天井の梁の上には、ボロボロの着物を纏い、青白い異様な形相をした男が少年のほうをじっと見下ろしていました。そして、その怪異は不気味な笑みを浮かべながら告げるのです。
「み つ か っ ち ゃ っ た」
ここで物語は唐突に幕を閉じます。何の説明も救いもなく、ただ怪異と目が合ってしまった瞬間で絵本が終わるという演出は、読者に言い知れぬ余韻と恐怖を叩きつけます。