歌丸師匠の晩年は、壮絶な病魔との闘いの日々でした。長年の喫煙習慣が引き金となった慢性閉塞性肺疾患(COPD)に加え、肺炎、腸閉塞、腰部脊柱管狭窄症など度重なる大病に見舞われました。2014年以降は入退院を繰り返し、体重は一時30kg台前半まで落ち込むほどの衰弱ぶりでした。
それでも歌丸師匠は、高座を降りようとはしませんでした。袖口から鼻へと酸素吸入チューブを通し、高座の脇に酸素ボンベを隠して設置。座布団に座るのもやっとの体でありながら、ひとたび扇子を手に取れば、衰えを感じさせない力強い語り口で客席を噺の世界へと引き込みました。
関係者の証言によると、医師や家族から休養を勧められた際、師匠は「落語をやめるくらいなら、死んだほうがましだ。高座で死ねたら本望だ」と頑として譲らなかったといいます。2018年4月19日、国立演芸場での『小言幸兵衛』が人生最後の高座となり、同年7月2日、横浜市内の病院にて81歳で永眠されました。