あの特徴的な三角形の連続模様には、明確な歴史的ルーツがある。日本の伝統文様における「鱗文(うろこもん)」がそれだ。蛇や龍、あるいは魚の鱗に見立てられたこの幾何学模様は、古くは古墳時代の埴輪や装飾古墳の壁画にもその原型が確認されている。
中世の武家社会において、鱗文は特別な意味を帯びるようになった。鎌倉幕府の執権を務めた北条氏が三つ鱗を家紋に採用したことは有名だが、それ以上に重視されたのが「脱皮を繰り返す蛇=再生」と「強固な鎧=身を守る」という象徴性だ。そこから転じて、鱗文は災厄を払い身を守る強烈な「魔除け」「厄除け」の護符として、武具や陣羽織に好んで用いられた歴史を持つ。
黄色という色彩も偶然ではない。古代中国の陰陽五行思想において、黄色は万物の中心を司る土行の色とされ、高貴さと大地のような安定、そして邪気を退ける力を象徴する。常に恐怖と対峙し、極限状態の中で雷の呼吸を繰り出す善逸の羽織にこの意匠があてがわれたのは、彼自身を守護し、眠れる力を覚醒させるための必然的な符牒だったといえる。