冨岡義勇を象徴するビジュアルといえば、左右で異なる柄を組み合わせた独特の「半々羽織」です。この羽織には、彼の人生を決定づけた過酷な過去と、決して忘れ得ぬ2人の恩人への哀悼が込められています。
羽織の右半分である無地の臙脂(えんじ)色は、鬼から義勇を命がけで守って命を落とした実の姉・蔦子(つたこ)の着物の形見です。そして左半分の緑と黄色の亀甲柄は、狭霧山での修行時代を共に過ごした無二の親友・錆兎(さびと)の形見でした。
かつて最終選別において、錆兎は藤襲山にいた鬼をほぼ一人で討伐し、義勇を含むすべての受験生を救いながら、手鬼によって命を奪われました。一匹の鬼も倒せず、錆兎に守られて生き残った義勇は、「自分は鬼殺隊にいる資格も、水柱を名乗る資格もない」という深い自己否定とサバイバーズ・ギルト(生き残ったことへの罪悪感)を抱え続けることになります。
義勇の纏う半々羽織は、姉と友の想いを背負い、彼らの命を無駄にしないための誓いそのものです。物語終盤、炭治郎との対話を通じて自らの原点を取り戻した義勇が、錆兎の想いを受け継いで前へ進む姿は、作品屈指の感動的な名場面として語り継がれています。