無限城での決戦は、悲鳴嶼行冥、不死川実弥、時透無一郎、不死川玄弥という鬼殺隊屈指の精鋭4人が命を削る総力戦となりました。激闘の末、無一郎の命を懸けた「赫刀(かくとう)」の一撃と玄弥の血鬼術による拘束、そして悲鳴嶼と実弥の猛攻により、黒死牟はついに首を切り落とされます。
しかし無惨同様、黒死牟は「首の切断による死」を克服し、異形の怪物のような姿へと再生を果たしました。もはや侍としての原型すら留めない醜悪な姿に変わり果てた瞬間、彼は鏡に映った自らの姿を見て戦慄します。
「これが、お前が本当に成りたかった姿なのか?」
脳裏に蘇ったのは、80歳を過ぎてもなお自らを圧倒し、寿命で立ったまま息を引き取った弟・縁壱の姿でした。かつて縁壱が老境で再会した際、涙を流しながら兄を哀れんだこと、そして自身の手で両断した縁壱の遺体から転がり落ちたのは、幼少期に自分が弟に与えた「手作りの笛」だったこと――。弟は最後まで、自分を愛し、慕い続けていたという事実に打ちのめされます。
人間を捨て、誇りを捨て、醜悪な化け物に成り果ててまで手に入れたかった強さの虚しさに気づいた黒死牟は、傷口からの再生を止め、自ら崩壊を受け入れて塵へと消え去りました。死の灰の中に残されたのは、真っ二つに割れた縁壱の笛だけでした。