累という少年の根底にあったのは、どこまでも純粋で、それゆえに狂気に満ちた「本物の絆」への渇望だ。人間だった頃の彼は、生まれつき体が弱く、走ることすら叶わない孤独な子どもだった。そこに現れた鬼舞辻無惨によって強靭な肉体を与えられ鬼と化すが、人を喰らう我が子を不憫に思い無理心中を図った両親を、自らの手で殺害してしまう。
「自分を庇って死ぬことこそが本物の親の愛ではないのか」——その激しい後悔と錯乱から逃れるため、彼は記憶の蓋を閉じ、他の鬼たちに恐怖と暴力で役割を強要する「偽りの家族」を那田蜘蛛山に築き上げた。しかし、恐怖で縛り付けた関係に温もりなど宿るはずもない。
さらに特筆すべきは、十二鬼月の中でも累が放っていた異質な強さと存在感である。本来、単独行動を好み群れることを嫌う無惨が、累に対してだけは「家族ごっこ」を公認し、自らの血を他人に分け与えて強化することさえ黙認していた。もし累が家族に能力を分散させず、自らの一身に血鬼術を集約していれば、その実力は下弦の壱や弐にも匹敵していたとされる。無惨が彼に寄せていた評価の高さは、十二鬼月の中でも極めて異例だったのだ。