本作の求心力を支えているのは、間違いなく主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)という稀有なヒーロー像です。従来のジャンプ漫画に多かった「天性の才能を持つ異端児」や「無鉄砲で破天荒な熱血漢」とは異なり、炭治郎はどこまでも家族思いで心優しい、長男としての責任感を背負った少年として登場します。
彼の歩む竈門炭治郎の成長ストーリーは、一歩一歩の地道な鍛錬と痛烈な挫折の連続です。自分の非力さに涙を流し、骨を折られながらも、「頑張れ炭治郎頑張れ」「今までよくやってきた」と自分自身を鼓舞して立ち上がる姿は、多くの読者に勇気を与えました。どんなに過酷な戦場であっても他者への共感と思いやりを失わない彼の高潔さは、現代社会を生きる私たちにとって眩しいほどの光となって映ります。
炭治郎を取り巻くキャラクターの魅力も際立っています。極度の恐怖からヘタレ全開になりつつも眠ると覚醒する我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)や、猪頭を被り野生の本能で突っ走る嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)など、それぞれが強烈なギャップと欠落を抱えています。彼らが互いの弱さを補い合い、命懸けの戦いを通じて本物の絆を育んでいく過程は、青春群像劇としても極めて完成度が高い仕上がりです。