黒死牟の実力は、これまでの上弦とは隔絶していました。無一郎は戦いの序盤で左手首を切断され、自身の刀で柱に串刺しにされるという絶望的な重傷を負います。しかし、不死川玄弥、不死川実弥、そして鬼殺隊最強の悲鳴嶼行冥が駆けつけたことで、無一郎は自らの命を捨て石にする決意を固めます。
串刺しの刀を自力で引き抜いた無一郎は、片腕を失いながらも戦線へ復帰。黒死牟の予測を超えた捨て身の突撃を敢行し、その胴体へ日輪刀を深々と突き刺しました。黒死牟の凄まじい反撃を受け、無一郎の胴体は腰から真っ二つに両断され、さらに右足も切り落とされます。
常人であれば即死する致命傷を負いながらも、無一郎の握力は緩みませんでした。黒死牟の体内で刀を強く握り締め、命の全エネルギーを注ぎ込むことで、刀身を赤く染め上げる「赫刀(しゃくとう)」を気迫だけで発現させたのです。赫刀の灼熱の熱量と内臓への激痛によって黒死牟の肉体再生を阻害・硬直させ、悲鳴嶼と実弥が頸を両断するための決定的な隙を作り出しました。
原作コミックス第20巻・第179話で描かれた彼の散り際は、ファンの間で「最も美しく、最も残酷な最期」として語り継がれています。戦いが終わり、事切れた無一郎の魂は、死後の世界で兄・有一郎と再会を果たしました。
「無駄死にだ、こんなところで死ぬなら何のためにお前が生まれたのかわからない」と涙を流して怒る有一郎に対し、無一郎は穏やかな笑顔で返答します。
「僕は幸せになるために生まれてきたんだよ……仲間ができて、その仲間を守るために命を懸けた。後悔なんて一つもないよ」
弟の曇りのない瞳を見た有一郎は、かつて言えなかった本心を叫びながら無一郎を抱きしめました。「お前だけは死なないでほしかった」と。14年という短い生涯を駆け抜けた少年は、最愛の兄の温もりの中でようやく安らかな眠りについたのです。