黒死牟戦における最大の衝撃シーンは、第20巻第174話で訪れます。玄弥の血鬼術による援護を受け、無一郎は自らの命を顧みずに黒死牟の懐へ飛び込み、その腹部へ日輪刀を深々と突き立てました。しかし、極限に追い詰められた黒死牟が無数の刃を体内から展開する血鬼術を放った瞬間、無一郎の右脚が断ち切られ、さらに胴体が腰の高さで真っ二つに両断されてしまいます。
常人であれば即死、あるいは意識を失うはずの致命傷を負いながらも、無一郎の両手は決して刀を放しませんでした。黒死牟の動きを1秒でも止めるため、無一郎は残された生命力のすべてを込めて刀を強く握りしめます。その凄まじい精神力と万力の握力、そして「仲間を勝たせる」という無私の祈りが、日輪刀の温度を一気に引き上げ、刀身を燃えるような赤に染め上げる「赫刀(かくとう)」を覚醒させました。
赫刀に体内を焼かれた黒死牟は内臓を灼熱の激痛で焼かれ、驚異的な再生能力を著しく阻害されることになります。この無一郎の決死の行動こそが、悲鳴嶼と実弥が黒死牟の頸を落とし、完全消滅へと追い込む最大の決定打となりました。自身の死を確信しながらも、敵を拘束し続けた14歳の執念は、鬼殺隊の歴史において最も過酷で気高い犠牲の一つです。