猗窩座がまだ鬼ではなく、人間「狛治」として生きていた明治直前の時代。病弱な父親を救うために罪を重ね、江戸の街を追われた彼が出会ったのが、素流道場の師範・慶蔵とその娘である恋雪だった。病床に伏す恋雪の看病を任された狛治は、彼女の命と向き合う中で、失われていた生きる意味を取り戻していく。
やがて恋雪の病状は回復し、二人は祝言を挙げる約束を交わす。「狛治さん、私と夫婦になってくれますか」。それは、貧困と孤独のどん底を生きてきた青年が初めて掴み取った希望の光だった。しかし、幸福のピークで突如として襲いかかったのは、隣接する剣術道場による井戸への毒殺という惨劇だった。留守中に祝言の相手と師を同時に失った狛治の心は完全に崩壊し、復讐の鬼と化すこととなる。