童磨と琴葉の関係は、外見上は「慈悲深い教祖と救われた信徒」に見えましたが、その実態は「捕食者と、生かされた獲物」という歪極まりない共存でした。しかし、その仮初めの平穏は、凄惨な形で崩壊を迎えます。
琴葉がある夜、童磨が信者の肉を喰らい尽くしている現場を目撃してしまったのです。知性ではなく直感で世界の真理を察知した琴葉は、恐怖にすくむことなく、童磨に対して「嘘つき!みんな騙されている!」と真っ向から糾弾の言葉を叫びました。童磨は「言わなければそのまま幸せに暮らせたのに」「君は馬鹿だなあ」と諭し、隠蔽を試みましたが、琴葉は一切の妥協を許さず、伊之助を抱えて夜の闇へと疾走しました。
しかし、人間が上弦の鬼の脚力から逃げ切れるはずもありませんでした。山中の断崖絶壁に追い詰められた琴葉は、自らの死を悟ります。そこで彼女が取った行動こそが、ファンの間で語り草となっている「命がけの崖下投下」でした。
琴葉は泣き叫びながら、まだ赤ん坊だった伊之助に「ごめんね、守ってあげられなくて」「どうか生きて」と詫び続け、足元を流れる激流の川へと伊之助を投げ落としました。崖から落とせば生き残る確率は万に一つです。それでも、鬼に捕まり確実に喰い殺される未来よりも、わずか数パーセントの生存確率に我が子の命を託したのです。
伊之助を落とした直後、琴葉は童磨の手によって骨の髄まで跡形もなく喰い尽くされ、絶命しました。童磨にとっては日常の「救済(捕食)」の一コマに過ぎなかったこの事件が、後の無限城における宿命の対決へと繋がる最大の導火線となります。