松竹を代表する国民的人気シリーズ『釣りバカ日誌』で西田敏行が演じた「ハマちゃん」こと浜崎伝助は、日本のコメディ映画史に燦然と輝く金字塔だ。出世欲はゼロ、頭の中は釣りと愛妻のことばかり。高度経済成長の残り香が漂うオフィス街で、肩肘張らずに生きる等身大のサラリーマン像は、過酷な現実に追われる人々の心を瞬く間に救った。
この名作を語る上で欠かせないのが、スーさんこと鈴木一之助を演じた三國連太郎との濃密な関係性だ。当初、狂気的な役作りで知られる大御所・三國との共演には現場全体に緊張が走っていた。だが、西田は真正面からアドリブをぶつけ、三國の頑なな職人魂を軽やかに溶かしてみせた。計算され尽くした名優同士の掛け合いは、台本を超えた奇跡のグルーヴを生み出し、20年以上にわたって日本中を笑いと涙で包み込む長寿シリーズへと昇華した。