奈良公園の敷地内を悠々と歩き回る姿から、多くの人々が彼らを「人間に飼い慣らされた動物」だと勘違いしがちだ。しかし、分類上彼らは紛れもないニホンジカであり、完全な野生動物として自立した生計を立てている。人工的に管理された飼育施設ではなく、広大な敷地内に自生する芝やどんぐりを主食として生きているのだ。
季節ごとに見せる表情の変化も極めてドラマチックだ。春には柔らかい夏毛に生え変わり、秋になるとオスは角を立派に育てる。発情期を迎えたオスの鋭い鳴き声は、古都の夜空に響き渡り、野性の本能を露わにする。人前に見せる愛嬌のある仕草は、厳しい自然界を生き抜く彼らが魅せる一面に過ぎない。