1998年に公開され、世界的なメガヒットを記録した『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』。この金字塔的傑作におけるアフレコ現場は、常人には伺い知れない緊張感と熱気に包まれていた。
当時、マイクの前に立った彼は、セリフが一切存在しない脚本を手にして息をのんだという。「みゅ」という単語だけで、喜怒哀楽どころか、生命の根源的な無垢さや強大な力を表現しなければならない。スタジオに入った瞬間、呼吸一つで空気感を一変させる緻密な役作りが始まった。
監督や音響監督との間では、ミリ単位の声のトーン調整が繰り返された。可愛らしさだけに寄せるのではなく、太古の遺伝子を宿す神秘的な存在としての説得力をどう込めるか。NGが重なる中でも一切の妥協を許さず、喉の奥の鳴らし方から息の抜け具合まで試行錯誤を重ねた秘話は、今やアニメ史における語り草となっている。