小説『あの子は頭が悪いから』を語る上で避けて通れないのが、執筆の契機となった実在の事件です。あの子は頭が悪いから 元ネタとなったのは、2016年5月に発覚した「東大誕生日研究会事件」でした。東京大学工学部などの男子学生ら5名が、豊島区内のマンションに他大学の女子学生を連れ込み、泥酔させた上で集団で強制わいせつ行為に及んだという容疑で警視庁に逮捕された凶悪事件です。
サークルという名目を隠れ蓑にしながら、実態はインカレ女子大生を標的にした卑劣な犯行でした。世間を最も驚愕させたのは、加害者の学生たちが取り調べや日常会話の中で見せていた「一流私立中高一貫校から東大へ進学したエリート」としての特権意識です。偏差値や学歴で人間を序列化し、自分たちより「格下」とみなした女子学生に対しては、何をしても許されるかのような歪んだ万能感を抱いていました。
タイトルとなった「あの子は頭が悪いから」という残酷なフレーズは、事件捜査の過程で浮かび上がった加害者側の傲慢な心理や発言を象徴しています。あの子は頭が悪いから 実話 真相を丹念に追った姫野カオルコ氏は、単にセンセーショナルなスキャンダルとして消費するのではなく、事件を生み出した日本の教育環境と社会構造の歪みにメスを入れました。