『母に捧げるバラード』の代名詞といえば、楽曲の大半を占める博多弁の激しい語り(セリフ)です。「鉄矢!」「今に見とけ、今に見とけで暮らすとバイ」というフレーズをはじめとするセリフの数々は、イクさんが日常で息子に投げかけていた生きた言葉そのものでした。
歌詞の中に登場する「貧乏を恥じるな、卑怯を恥じろ」という精神は、貧しい暮らしの中でも武田家の背骨となっていました。イクさんは決して裕福ではない環境の中でも、他人に頭を下げて卑屈になることを許さず、常に前を向いて生きる矜持を子どもたちに教え込みました。
武田鉄矢さんがステージ上で叫ぶセリフは、単なる母親の物真似ではありません。自分を奮い立たせ、世間の荒波へと押し出してくれた母の祈りを、全身全霊で再現した魂のパフォーマンスでした。