なぜ韓国は、わずか半世紀余りでこれほどまでに寿命を伸ばすことができたのでしょうか。その背景には、単なる経済成長だけでは説明できない、国家的な制度改革と医療アクセスの進化が存在します。
① 全国民を網羅する国民皆保険制度(1989年確立)
最大のターニングポイントは、1989年に達成された国民健康保険の完全義務化です。これにより、所得水準にかかわらず誰もが安価で高品質な医療サービスを受けられる土台が完成しました。医療機関へのアクセス障壁が一気に下がったことで、かつては手遅れになりがちだった感染症や慢性疾患の早期治療が劇的に進みました。
② 国家主導の徹底した「国家がん検診プログラム」
韓国政府は1999年から、胃がん・大腸がん・肝臓がん・乳がん・子宮頸がんを対象とした国家がん検診事業を本格展開しました。一定年齢以上の国民に対し、自己負担ほぼゼロまたは極めて低額で定期検診を提供。この結果、韓国における胃がんや大腸がんの5年相対生存率は70%台後半に達し、欧米諸国を凌駕して日本と並ぶ世界最高レベルの治療成績を誇っています。
③ 乳幼児死亡率の激減と衛生・栄養インフラの近代化
1970年代初頭には出生1,000人あたり40人を超えていた乳幼児死亡率は、現在では2人台前半まで激減しました。水道設備の普及をはじめとする公衆衛生の近代化と、キムチや野菜を中心とした伝統食をベースにしつつ動物性タンパク質をバランスよく摂取する食生活への移行が、基礎的な生命力を大きく底上げしました。