「核兵器を持つメリットとは何か」という問いは、平和主義を重んじる日本の言論空間では長くタブー視されてきました。しかし、国際政治と安全保障の現実を直視するとき、この兵器がもたらす戦略的効果を理解しなければ、世界のパワーバランスの真相を見誤ることになります。
保有国が核兵器を手放さない決定的な理由は、国家の最高目標である「国家主権の維持と体制の存続」を最も確実かつ安価に達成できる手段だからです。歴史を振り返れば、核兵器を放棄した国家がその後どのような運命を辿ったかは明白です。1994年の「ブダペスト覚書」によって旧ソ連時代の核兵器を手放したウクライナは、安全の保証を取り交わしたはずの大国ロシアから武力侵攻を受けました。また、リビアのカダフィ政権は核開発を放棄した数年後に欧米の軍事介入と内戦によって崩壊しています。
一方で、国際的な経済制裁を受けながらも核開発を強行し、事実上の核保有国となった北朝鮮は、米国の直接的な軍事攻撃を免れ、現体制を維持し続けています。安全保障の現場において、核兵器は「持っているだけで他国からの政権転覆や領土侵奪を阻絶する究極の安全保障上のメリット」として認識されており、これが各大国が莫大な維持費を払ってでも手放さない根本的なインセンティブとなっています。