和菓子と洋菓子を分ける最大の境界線は、使用する基本原材料と、そこから生まれる「味覚の構築手法」にあります。一言で表すなら、和菓子は余計な油脂を削ぎ落とす「引き算の美学」、洋菓子は油脂や空気、乳素材を幾重にも重ね合わせる「足し算の美学」によって成り立っています。
和菓子の主原料は、米、小麦粉、小豆、大豆、砂糖、寒天、葛粉といった植物性素材が中心です。動物性の食材は鶏卵が一部で使われる程度であり、牛脂や豚脂、バターなどの固形油脂が使われることは伝統製法において原則ありません。素材本来の風味、小豆の持つ土の香り、米の甘み、季節の果実の瑞々しさを極限まで引き立てるため、油脂によるマスキングを徹底して排除します。
対する洋菓子は、小麦粉、バター、牛乳、生クリーム、鶏卵、砂糖が基本骨格を形成します。製菓理論において、油脂は単なる調味料ではなく、小麦粉のグルテン形成を抑えてサクサクとした食感を生む「ショートニング性」や、空気を抱き込んで生地をふんわり膨らませる「クリーミング性」、口の中で体温によってとろける「融点コントロール」など、構造そのものを支える物理的役割を担っています。パティシエの製法とは、乳化と温度管理を極限までコントロールし、脂質と糖と乳タンパク質が織りなす重厚なハーモニーを創り出す作業に他なりません。