Yahoo!知恵袋やSNS、コミュニティサイトに投稿された当時のリアルな証言を検証すると、なぜこの作品がここまで特異な熱量と批判を同時に生み出したのか、その構造的理由が浮かび上がってきます。
当時を知る古参ファンの手記やネットの反応には、次のような生々しい声が残されています。
「中学校の頃に夢中でハマり、pixivやニコニコ動画で関連動画を毎日漁っていた。当時は歴史を楽しく学べるバイブルだと思っていたけれど、大人になって世界情勢や植民地支配の歴史を深く知るにつれ、『単なるネタ』として笑い飛ばせなくなった」(元ファンの告白ブログより)
「2000年代初頭の個人サイト時代は、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)などで流通していた古典的なエスニックジョーク(国民性ジョーク)をベースにした『内輪のゆるい4コマ』だった。それが商業化され、一般層や海外の目に触れる規模になったことで、配慮不足と受け取られるギャップが一気に表面化した」(Yahoo!知恵袋の投稿より)
熱狂的な支持を集めた最大の理由は、小難しく敬遠されがちな世界史や国際情勢を、魅力的な美男子キャラクター同士の掛け合いに落とし込んだ点にあります。漫画『天幕のジャードゥーガル』の作者をはじめ、多くの現代クリエイターが「歴史に興味を持ったきっかけ」としてヘタリアを挙げていることからも、その文化的影響力の大きさは疑いようがありません。
しかし、その「親しみやすさ」は、植民地支配や戦争、民族対立といった「現実に流された血と傷跡」の歴史を著しく脱政治化・脱歴史化してしまう副作用を孕んでいました。フィクションとして楽しむ層と、現実の歴史的トラウマを想起させられて傷つく層との間に、決定的な断絶が存在していたのです。