50年を超える芸歴のなかには、当然ながら穏やかな時間ばかりではありませんでした。伝統芸能界に身を置く者として避けられない人間関係の軋轢や、週刊誌を賑わせた過去のスキャンダル報道。世間の厳しい視線が向けられた際にも、真由美夫人が取り乱して夫を責め立てることはありませんでした。
「舞台の上でお客様を笑わせることがあなたの仕事」。そう語りかけるような毅然とした態度は、文枝にとって何よりの戒めであり、最大の救済でもありました。世間の好奇の目に晒されながらも家族の結束を崩さなかった夫人の強靭な精神力こそが、文枝が芸人としての命脈を保ち続けることができた決定的な要因でした。