辞書的な意味において、「ヒモ」とは「女性に金銭を貢がせたり、養わせたりして生活している情夫」を指します。漢字表記では「紐」が当てられますが、この言葉が現在のような意味を持つに至った経緯には、日本の伝統的な職業風俗が深く関わっています。
語源として最も有力とされているのが、海女(あま)漁の現場に由来する説です。かつて海女が海に潜ってアワビやサザエを採る際、海上の小舟の上では夫が命綱である「紐(命綱)」を握り、妻が浮上する合図を待っていました。危険を冒して冷たい海に潜り現金を稼ぐのは妻であり、夫は舟の上で紐を引いて待つだけに見えた構図から、「女性の労働に依存して生きる男=ヒモ」と呼ばれるようになったと伝えられています。
もうひとつの説は、江戸時代の花柳界・遊廓における隠語です。遊女に情夫(愛人)がいる状態を「紐が付いている」と表現し、女性を背後から操って利益を得る男を「ヒモ」と呼んだことが発祥とも言われています。いずれの語源においても、「女性の稼ぎによって男性が生計を立てる構造」が根底に共通しています。