二人の関係性を語る上で欠かせないのが、作中における劇的な距離感の変遷です。単なる「仲良し」でも「ライバル」という一言でも片付けられない、複雑怪奇で強固な結びつきは、いくつもの試練を経て形成されました。
雄英高校入学当初、推薦入学のエリートである轟焦凍に対し、爆豪勝己は剥き出しの敵対心を抱いていました。その摩擦が頂点に達したのが雄英体育祭の決勝戦です。自らの心に巣食う父親への葛藤から左側の炎を使わずに敗北した轟に対し、爆豪は「全力のてめェに勝たなきゃ意味がねェ」と激昂。このすれ違いが、二人の長い対話のプロローグとなりました。
明確な転機となったのは、仮免再取得補講編です。共に仮免試験に落ちた二人は、問題児の園児たちと向き合う課題を通して、言葉以外の部分で互いの本質を察知し始めます。轟の天然とも言えるマイペースさと、爆豪の苛烈ながら的確な洞察力が噛み合い、二人の間に対等な空気が芽生え始めました。
そして決定打となったのが、冬休みインターン編(エンデヴァー事務所編)です。緑谷と共にNo.1ヒーローのもとへ身を投じた二人は、過酷な実戦をくぐり抜ける中で「互いの速度に唯一ついていける存在」として覚醒します。特に、轟家の重苦しい過去や食卓の空気に触れた際、爆豪が見せた「踏み込みすぎず、同情もせず、ただ事実としてそこに居る」という振る舞いは、轟にとって得難い精神の拠り所となりました。