従来の変速システムは、レバーとトランスミッションが金属ケーブルやリンケージで物理的に連結されていた。その物理的な制約を完全に打ち破り、電気信号によって変速命令をトランスミッションへ届ける技術が「シフト・バイ・ワイヤ」だ。
この革新を日本の大衆車として一気に広めた立役者こそ、トヨタ自動車が誇るトヨタ・プリウスである。センターコンソールから突き出た小型のトグルレバーは、倒しても指を離せば自動的にホームポジションへ戻る。物理的なストロークを排した軽量な操作感は、ハイブリッド時代の到来を強く印象づけた。
機械的な接続が不要になったことで、ダッシュボード周辺のレイアウト空間は劇的に自由度を増した。だが同時に、従来のレバー操作に慣れ親しんだドライバーからは「今どのレンジに入っているか体感で分かりにくい」といった戸惑いの声が上がったことも事実である。先進的なデザイン性と直感的な操作性のバランスをどう取るかという課題は、この時期から急速に議論され始めた。