主役を担うのは、日常の些細な機微を絶妙な温度感で表現させたら右に出る者がいない小林聡美だ。彼女が醸し出す独特の佇まいは、奇想天外な宿泊客たちを受け止めるペンションの女主人の役柄に完璧な説得力を与えている。
そして脚本と演出のキーマンとして名を連ねるのが三谷幸喜。彼が得意とするシットコムの様式美が、本作ではさらに鋭角なヒューマンドラマへと昇華されている。予測不能な台詞の応酬、意図的な沈黙、唐突に訪れる不条理な笑い。ふたつの才能が交わったとき、予定調和を嫌う大人のためのエンターテインメントが完成した。