劇場に足を踏み入れた瞬間、空気が違うことに気づく。ポップコーンの香りと共に充満するのは、童心に帰った大人たちの熱気だ。スクリーン上で黄色い怪盗予備軍が一斉に転び、奇声を上げるだけで、観客席からは腹を抱えた爆笑が巻き起こる。計算し尽くされたサイレント・コメディのDNAが、そこには脈々と流れている。
チャップリンやバスター・キートンが確立したドタバタ劇の美学を、現代の最先端3DCG技術で再構築した手腕は見事というほかない。複雑な伏線や説教くさいメッセージを極限まで削ぎ落とし、純粋な「動きの面白さ」だけで畳みかけるスタイル。これこそが、世界中のあらゆる文化圏で言語の壁を越えて爆発的なヒットを記録し続ける最大の理由だろう。