海上の特攻艇といえば海軍の「震洋」が有名ですが、陸軍のマルレとの間には設計思想において決定的な違いが存在しました。
海軍の震洋は、艇首(船首)に約250kgの爆薬を固定装備し、目標の敵艦に全速力で体当たりして自爆する、生還を一切考慮しない純粋な特攻兵器として設計されました。
対する陸軍のマルレは、艇の後部に120kgの爆雷2個(合計240kg)を搭載する構造でした。敵艦の舷側数メートルまで肉薄した瞬間に時限信管付きの爆雷を水中に投下し、即座に急旋回して全速力で退避・生還する「肉薄攻撃艇」という建前が取られていた点が最大の特徴です。
しかし、この「生還の可能性」は設計上の理論値に過ぎませんでした。投下から爆発までの猶予はわずか数秒から十数秒しかなく、ベニヤ板製の船体は爆雷の衝撃波や水柱に巻き込まれれば容易に大破します。さらに敵艦からの猛烈な機銃掃射を浴びるため、実戦において投下後の無事な生還は絶望的であり、実質的には震洋と同じく生還を期し得ない特攻攻撃となりました。